2011年05月14日

バイク話/カワサキKR250S

カゼをひいて外に出る気もしないので「東本昌平風に?」バイク話でも綴ってみる(笑)


カワサキKR250S(フルノーマル) & オレ

時代はさかのぼり80年代後半〜90年代始め。オレは駆け出しのグラフィックデザイナー(パシリ)として日々を悪戦苦闘していた。当時はまだDTP(Mac)などというお手軽な機材などは無く、烏口やロットリングというペンで1ミリの間に線を何本ひけるかを競い合うようなアナログの時代だ。そしてデザイナー同士の上下関係も師弟制度が色濃く残り、先輩の理不尽な要求にも淡々と従わざるを得ない時代である。当然ながら好きなバイクやミリタリーなんぞに向ける時間や余裕もなく、ただただ修行の日々が続いていた。こういった時代があったからこそ今の自分があるわけだが、その結果ミリタリーに関しては、仕事がある程度こなせるようになる20代の後半までスッポリと抜け落ちることとなる。。。

だがしかし、その駆け出し時代はバブルの絶頂期。就職先に困る事などはなく、テキトーに決めて入った小さなデザイン事務所でも入社直後にボーナスが出るような時代だ。そう、初めてもらったボーナスはたしか15万円だったと記憶している。そして鬱積した日々の中で「自分を取り戻すために」その金を握りしめてバイク屋へ直行する。高校時代から乗りたかった憧れのカワサキKR250を手に入れるためだ。当時は中古車価格が15万前後で何とか手が届くギリギリのライン。周りの実家組やボンボン大学生などはBMWだのDCブランドだのマハラジャだのでワンレンボディコンのイケイケギャルとバブルを謳歌している時代だが、当時のオレは歌舞伎町の安ディスコと15万の中古バイクが限界だった。。。

目の前で「買ってよ♡」とまるで娼婦のように妖艶な曲線を見せびらかす紺色のKR250S(A2)。視点を変えるたびに車体のエッジを流れる光がオレを誘う。だがしかし、ソイツはオレ好みの「女」ではなかった。俺が求めているのはKVSSという気の効いた排気デバイスなんぞは付いていないいわゆる「ジャジャ馬」のKR250(A1)の方だ。だがしかし、目の前で露骨に誘ってくる女にはかなわない。いつ巡り会えるかわからない美女よりも、多少ブスでも目の前で迫ってくる女には負けてしまう。それが男ってモンだ。そして「彼女」にまたがりエンジンを掛けてみる。タンデムツインの乾いた「あえぎ声」が店内に響き渡る。「目の色が変わる」というのはこういう事を言うのだろう。もはやコイツが最高の女だと勘違いしてしまう。まぁ実際の女でもよくある話ではある。。。


ミスター・バイク誌/1992年11月号

ちょっと気に入らない「女」ではあったが、あとは自分好みに変えていけばいい。最近はバイクのカスタムといってもショップに全て任せる事が多いが、当時は金は無かったが情熱だけはあった。都内の解体屋や中古パーツ屋を巡り、食費よりもバイクのパーツ代を優先した。糸ノコでカウルをぶった切ったり、締め付けトルクって何?といったレベルでのパーツ取付け。いわゆる「切った貼った」のお世辞にも美しいとはいえないカスタムではあったが、今振り返るとこの時代が一番楽しかったようにも思える。

ある日コイツと走っていると、真夜中だというのに片側3車線の京葉道路が渋滞している。 「なぜこんな時間に渋滞しているのだ?」と思いながら、車の間をすり抜けしていくと、だんだんと渋滞の先頭が見えてきた。 工事でもないし事故でもない、不思議に思いつつそのまま渋滞を抜けると、、、そこは暴走族のド真ん中であった。。。直管、竹槍、ロケットカウル、明らかに我々の種族とは違う。4サイクルの直感サウンドが響き渡る中、 KRのスガヤチャンバーは泣きべそをかいている。この場はスピードを上げて抜かしてしまっていいものか? それともバイク乗り同士、友好的に振る舞えばいいものか? 怖いオニーチャン達にガンを飛ばされながら、なぜか一緒に並走しているオレ。。。しかし暴走族側もどう対応していいものやら困っている様子で、それでは「ちょっとずつスピードを上げて振り切ってやろう」と決意。イザという時には動力性能ならKRの方が確実に上である。じわじわと間隔をあけながら「追いかけてくるのか?」と振り返ると、 どうやら気にも留めてない様子。。。 むやみに渋滞の先頭に出てはいけない事を学習した20代の初め。。。
  


Posted by アカトラ  at 18:53アカトラ